Research press release

人間行動学:誤った情報を検証するためにネット検索をしていると、その情報が真実だと確信してしまうことがある

Nature

検索エンジンを使ってフェイクニュースの真偽を判定する課題に取り組んだ被験者は、その情報を真実だと確信してしまう確率が高いという研究結果を報告する論文が、Natureに掲載される。フォローアップ実験から、こうした結果が得られた理由として、被験者がネット検索で得た情報の質が低かったことが挙げられると示唆された。今回の知見は、ネット検索を行う人々が検索結果の質を評価できるように手助けするデジタルリテラシープログラムが不可欠であることを示唆している。

間違った情報が増え続け、政治的分断が拡大し続けている昨今、真実の探求は、手っ取り早くネット検索することよりも複雑化しているかもしれない。ソーシャルメディア上で間違った情報が拡散する仕組みについては、これまでも研究が行われてきたが、人々が検索エンジンを使ってどのように間違った情報の事実確認を行っているかについては、ほとんど注目されていなかった。

今回、Kevin Aslettらは、米国内に居住する被験者(3006人)が研究参加時からさかのぼって48時間以内に発表されたニュース記事の正確性を評価するという試験を実施した。1回目の試験では、間違った情報の真偽をネット検索で調べるよう勧められた回答者が間違った情報を真実と評価する確率は、勧められなかった回答者と比べて19%高かった。この試験が合計5回実施され、一貫した結果が得られた。

また、今回の研究では、ネット検索をしてニュース記事を評価した被験者の方が、質の低い情報源からの裏付け証拠にヒットする確率が高いことを示す証拠も得られた。Aslettらは、この状況を「データボイド(data void)」と呼んでいる。これらの知見は、検索エンジンを使ってニュース記事を評価する場合に、それが質の低い情報源からのニュース記事であると、その正確性に対する信頼が強まってしまう可能性があることを示している。

Aslettらは、今回の知見から、検索エンジンの使用を重視するロバストなデジタルリテラシープログラムを開発し、実施する必要性が示されたと指摘している。

doi: 10.1038/s41586-023-06883-y

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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