Research press release

神経科学:脳が発話音声を認識する仕組み

Nature

人間の脳の聴覚皮質領域(上側頭回)の個々のニューロンが発話音声にどのように応答するかを、埋め込み型デバイスを用いて大規模に記録する方法について報告する論文が、今週、Natureに掲載される。今回の知見は、発話音声の知覚の神経基盤に関する理解を深めることになる。

人間の脳は、受け取った可聴信号を言語構造(音節、単語、文など)に変換することによって発話音声を処理(符号化)する。脳の活動を記録する方法の1つである皮質脳波記録法を用いたこれまでの研究で、発話音声の符号化のそれぞれの要素に関与する脳領域が特定されたが、どのニューロンが活動し、複数のニューロンがどのように組織化されているかを詳細に把握することは困難だった。個々のニューロンの活動を記録する複数の方法が考案されているが、小規模なサンプリングしかできないため、適用例は限られていた。

今回、Edward Changらは、新しい埋め込み型デバイスであるNeuropixelsプローブを用いて、数百個のニューロンの細胞活動を個別に記録した。このデバイスは、8人の被験者の脳の上側頭回(発話音声の知覚と理解に関与する)に配置されて、発話音声(200例の文章)に対する被験者の応答を記録した。その結果、皮質の各層に分布した685個のニューロンの活動が記録され、発話音声刺激に対する応答に関連した活動が特定された。さまざまな応答が観察され、ニューロンが応答する文章の部分は、ニューロンごとに異なっていた。また、Changらは、皮質内で同じような深さに位置するニューロンは同じような音声特徴を符号化する傾向があると指摘している。

以上の知見を総合すると、人間の皮質のさまざまな深さに存在するニューロンに発話音声がどのように符号化されているかが明らかになり、上側頭回においてニューロンがどのように組織化されているかを理解するためにも役立つ。

doi: 10.1038/s41586-023-06839-2

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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