Research press release

古生物学:脊椎動物の初期進化過程を解明する手掛かりをもたらす古代の魚

Nature

約4億5500万年前のものと推定されているオルドビス紀の無顎魚の頭部軟骨の化石を分析したところ、この頭部軟骨が、三次元的に保存された脊椎動物の頭蓋内骨格としては最古のものであることが分かった。この分析結果を報告する論文が、今週、Natureに掲載される。この研究は、脊椎動物の頭部の進化に関する重要な知見をもたらしている。

オルドビス紀の無顎魚は、最も初期の脊椎動物として知られている。この魚は、軟骨性の内部骨格を持っていたが、関節が連結した状態の遺骸化石はほとんど見つかっておらず、解剖学的構造がほとんど分かっていない。今回、Richard Deardenらは、4億5500万年前のハーディングサンドストーン層(米国コロラド州)から出土した無顎魚(Eriptychius americanus)の頭部化石をCT(コンピューター断層撮影)によって分析した。この頭部化石には、末端に位置する口や側方に配置された眼窩などの構造が収容された左右対称の融合していない軟骨(脳頭蓋の眼窩より前の部分)が含まれていた。この配置は、他の既知の脊椎動物の現生種と絶滅種とは大きく異なっている。

E. americanusは、古代の魚という点だけでなく、脊椎動物の系統発生上の位置付けという点からも重要視されている。この魚は、脳頭蓋を持つ他の魚類分類群(例えば骨甲類やガレアスピス類)とは進化的に遠い関係にある。E. americanusの解釈は非常に難しいが、最も初期の有顎脊椎動物が持っていた頭蓋の骨格がどのように形成されていたかを解明する手掛かりになる。

doi: 10.1038/s41586-023-06538-y

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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