Nature ハイライト

物理:太めのヘリウムでも融合は早くない

Nature 431, 7010

複合核形成過程の専門家たちは、以前、原子核の芯の外縁に余分な中性子を持つ原子では、2つの核を1つに融合させる可能性が高まるかもしれないと論じていた。今週号に発表された実験で、この予想が誤っていたことがはっきりした。 普通のヘリウムの原子核は、2つの陽子(正の電荷を持つ)と2つの中性子(質量は陽子と同じであるが電荷を持たない)からなる。さらに2つの中性子を加えると、もとの核のまわりにハロー領域が現れる。余分な中性子はこの領域に存在すると考えるのが妥当だろう。ハロー領域の中性子は原子核と弱く結合しているから、ほかの原子核と重なってついには核同士を融合する能力を高める可能性が考えられていた。 しかしR Raabe たちが、ハロー中性子を持つヘリウム6原子をウラン標的に衝突させたところ、余分な複合核形成は起こらなかった。その代わり、重いヘリウム原子核は2つの中性子をウランに与えただけで、標的の裏側から残留核ヘリウム4となって流れ出し、それが反論の証拠となった。

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