Nature ハイライト

進化:胚の化石で系統発生の謎解き

Nature 427, 6971

中国の古生物学者グループが、5億年もの大昔に生きていた小さい虫の胚が発生する様子を解き明かしてみせた。中国南部の湖南省で見つかった化石を調べたところ、Markueliaとよばれるこの動物が卵から成体の形に直接孵化したことが明らかになった。一方この仲間の現在の子孫たちの多くは幼生の段階を経るようになってきている。 MarkueliaはScalidophora類とよばれる動物分類群の中で進化のごく初期に現れた仲間だと、X-p Dongたちが報告している。海にすむこの蠕虫類はこれまで身元がはっきりしなかったが、系統分類上は昆虫や線虫類に近い。今回見つかったほぼ球形の化石類は直径が236〜411μmあり、まっすぐに伸ばせば3 mmにもなろうという胚がS字状に折りたたまれている。 この湖南省の化石群は胚発生を研究するうえで貴重な手がかりになると、G BuddがNews and Viewsで述べている。胚の化石は微小で動物の種類もなかなか特定できないため、大昔にいた動物種の生活史については調べることが難しい。しかしDongたちが今回示した証拠からすると、初期のScalidophora類は卵から成体の形態へ直接発生し、おそらくそのあとに幼生などの複雑な発生段階が進化したことになる。

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