Nature ハイライト

Cover Story:粉々に砕く:染色体粉砕(クロモスリプシス)の再現から明らかになった、微小核の染色体破壊への関わり

Nature 522, 7555

表紙は、Daniel Kohnの連作である『科学に関する思考 – データセット(Thinking about Science – DataSets)』の1つで、染色体粉砕(クロモスリプシス)を描いた『解体(Dis-assembly)』である。染色体粉砕は、染色体の大規模な破壊と再編成が含まれる劇的な染色体事象であり、1個の細胞中に含まれる染色体の1つないしは少数だけに起こることが普通で、多様な腫瘍や先天性疾患で観察されている。今回、生細胞画像化法と単一細胞ゲノム塩基配列解読法を組み合わせて用いた研究で、染色体粉砕に類似した再編成が再現された。この研究結果は、単一の染色体が微小核(micronucleus)と呼ばれる構造へ誤分離されると、この崩壊事象が起こるようになることを示している。これらの断片は細胞分裂後にゲノムへの取り込みが可能で、再編成が起こり、場合によっては染色体粉砕の特性を全て備えたままになる。微小核での染色体の粉砕は、小さな環状染色体断片の形成につながることもあり、これは「DM染色体」形成の最初の段階であって、がんではこうした染色体構造によって増幅されたがん遺伝子が運ばれる。この研究は、染色体粉砕の基盤となる分子機構を実験的に実証した初めての例である。

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