Nature ハイライト

進化:性のありがたみを酵母で実証

Nature 434, 7033

なぜ我々はわざわざ面倒な有性生殖をするのだろうか。時間もとられるし、行動面でも発育面でも余計に消耗することになる。しかも、そのたびに遺伝子が混ぜ合わされるので、遺伝子の有利な組み合わせが崩れてしまうリスクにも絶えずさらされる。19世紀の科学者たちは、性が維持されるのは進化を速めることができるためだと考えたが、それを実証した例が今回初めて得られた。 M R Goddardたちの報告では、厳しい環境に置かれた場合、有性生殖をする酵母はしない酵母に比べて環境への適応能力が優れているという。Goddardたちは、有性胞子を作れない変異型の酵母株を作り出した。ストレスのない条件下では、この変異酵母株が世代を経て生き延びる率は正常な酵母と大差なかった。ところが、ストレスのかかる高温条件下では、実験で世代を経るにつれて、変異酵母株よりも有性生殖をする酵母のほうは適応度の点で勝るため、増殖率がずっと高まることが明かになった。 このことから、最適個体の生き残りという点では性が実際に役立つことがうかがわれる。遺伝子の混ぜ合わせが起こることで、複数の有用な遺伝子が一緒になる可能性が高まるからだ。ただし、今回の研究によって哺乳類の性をめぐる謎のすべてに答えられるわけではない。たとえば、雄側の性細胞はひどく小さくて作るのも安上がりだが、雌はなぜそれを許しているのだろうか。「有性生殖がなぜこれほど広く見られるのかという疑問にちゃんと答えるには、まだまだ時間がかかる」とR F HoekstraはNews and Viewsで述べている。

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