Nature ハイライト

宇宙:原始惑星衝突時の海洋の影響

Nature 433, 7028

宇宙での巨大天体衝突による惑星形成段階では、原始惑星に海洋が存在したかどうかによって、その惑星が原始大気を維持できたかどうかが決まった。このことにより、希ガス36Arの存在量が、地球と金星で違っていることが説明できると、玄田英典と阿部豊は考えている。 原始惑星は火星ほどの大きさで、太陽系の惑星が出来たときの構成要素であり、おそらく大気をもち、液体状態の水の海洋をもつものもあっただろう。玄田と安部は、簡略化したシミュレーション・モデルを使って、原始惑星の巨大天体衝突のシミュレーションを行った。そして、金星の軌道上の原始惑星のように海洋が存在しないと想定される場合には、衝突時に大気が十分に加速されず、重力に打ち勝つには至らないことを発見した。反対に、地球の軌道上の原始惑星で想定されるように海洋が存在する場合には、衝突時に海洋が蒸発して水蒸気爆発が起き、これにより、惑星を覆う大気が十分高速に加速され宇宙空間に散逸する。 これらの結果から、原始星雲ガスからの36Arが、巨大衝突段階を経てなぜ地球より金星で50倍残存できたのかということが、新たに説明できるかもしれない。

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