Nature ハイライト

生体力学:ハエトリソウの葉がぱっと閉じる仕組み

Nature 433, 7024

ハエトリソウ(Dionaea muscipula)の葉が瞬時に閉じる仕組みは、自然界で植物が示すもっとも速い動きの1つである。しかしハエトリソウが、筋肉や神経なしで葉を0.1秒足らずのうちに閉じる機構についてはわかっていなかった。ハエトリソウがすばやく葉を閉じる動作の新たな解析が行われ、この植物が不運な虫がもたらす刺激によって、罠のあごの部分にあたる葉の反りかえり具合(曲率)を「能動的に」変化させていることがわかった。 L Mahadevanたちは、葉の表面にある感覚毛が刺激を受けてから捕虫葉がしっかり閉じるまでの一連の動作を調べた。葉を詳細に観察すると、反りかえりは葉を外側に弓状に曲げているひずみによって生じていることがわかった。そこで、葉の表面に蛍光色素を点状に数十箇所塗って、その動きを高速紫外線カメラで撮影し、葉が急に閉じる際にこのひずみが解消されるにつれて変化してゆく葉の構造を克明に観察した。 葉が速やかに閉じるのは「ばね−座屈不安定性」と呼ばれる過程によるもので、この過程は、コンタクトレンズの凸面をへこませるとパッと元に戻る動きに似ていると著者たちは述べている。葉が刺激を受けると、その曲率がわずかに変化する。この過程は植物によって能動的に制御されているらしいがその機構はよくわかっていない。それはともかく、こうした変化がひとたび起こると葉に生じていた弾性的なひずみがもはや保持できなくなり、葉はぴしゃりと閉じて獲物が罠にかかるのである。

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