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行動生理:信頼の瓶詰め?

Nature 435, 7042

信頼を瓶詰めにしておいて、誰かにちょっとお金を借りたくなる時に備えておけたらどんなにいいだろう。ところがなんと、それをやってのけた研究者たちがいる。ある薬を被験者にかがせたところ、自分の金を預ける相手に対する信頼が増したのだ。  鍵となる化学物質はオキシトシンという神経ペプチドで、動物では雌雄のつがいの絆など社会的な相互作用を促進させることがわかっている。E Fehrたちは、被験者に「信頼ゲーム」をやってもらい、彼らの行動を調べた。このゲームでは、「投資家」は自分の所持金を「受託人」にいくら投資するかを決めることができた。受託人はその投資額の4倍を手にしたあと、投資家にいくら払い戻すかを決めた。  オキシトシンを吸入すると、投資家は信頼の気持ちを強くもつようになった。さらに、受託人の役をコンピューターに置き換えると、この効果はみられなくなった。このことから、オキシトシンは単に人がリスクを冒そうとする傾向を高めるのではなく、社会的な相互作用を促進するように働くことがわかる。「今回の結果から、自閉症のような信頼感が希薄になる病態や、逆に信頼感が増大する病態を調べるための可能性が開けてきた」とA DamasioはNews and Viewsで述べている。

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