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医学:大麻に含まれる化合物で血管の疾患を治療

Nature 434, 7034

炎症性疾患であるアテローム性動脈硬化症は、先進国では心臓病や脳卒中の主な原因であるが、大麻に含まれる主要な化合物には動脈硬化の発生を防ぐ効果があるらしい。マウスに少量のΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)を与えたところ、動脈硬化の進行が抑えられることがわかった。 血管に免疫細胞が蓄積すると、動脈が狭窄し、脂質が蓄積し、プラークが形成されて、アテローム動脈硬化が起こる。F Machたちによれば、THCは細胞表面にあるCB2受容体と呼ばれるタンパク質に結合することによって免疫細胞の動員を妨げるという。CB2受容体とTHCとの結合を妨げる化学物質を投与するとTHCの治療効果は消失し、マウスの病状は引き続き進行した。 脳内でTHCは、CB1と呼ばれる別の細胞表面受容体に結合する。今回マウスに投与したTHC(体重1 kgあたり約1 mg/日)は、CB1受容体の活性化に必要な量よりも少ないため、大麻の向精神作用は認められなかった。この結果は、アテローム性動脈硬化症の治療薬として、純粋な単離THCが使用できる可能性を示唆している。純粋な単離THCを使うことで、血圧上昇などの大麻に由来する有害な作用が避けられる。しかし、「このような結果が出たからといって、マリファナを吸うことは心臓に良いと短絡的に考えてはならない」とM D RothはNews and Viewsで指摘している。

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