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気候:欧州の猛暑から出たもう1つの赤信号

Nature 437, 7058

2003年夏の欧州熱波では、8月の気温が史上最高を記録し、大規模な山火事が発生するとともに推定で3万5000人が犠牲となった。P Ciaisたちは今回、気温の急上昇にはたちの悪い置き土産がもう1つあったことを突き止めた。欧州全域ではその夏、植物の成長が約30%も低減していたのである。  これは単に作物の収量が平年を下回ったというだけではない。植物の成長低下は大気中から取り込まれる二酸化炭素の量が通常の値を下回ったことを表しているのだから、欧州の生態系が地球温暖化に関する正のフィードバックの源となったことを意味している。気候モデルでは一般に、気候温暖化は植物の成長を促進するとともに成長期を延長するため植物組織への炭素固定量が増加すると予測する場合が多いが、2003年の熱波はこれと正反対の結果をもたらした。欧州東部の少雨と欧州西部の猛暑(例えばフランスでは40℃を超えた)が相まって、欧州では過去100年間に例をみないほど植物の成長が妨げられたのである。  今回の知見は、気候と生物圏との相互作用に関するCiaisたちのコンピューターモデルを、生態系による二酸化炭素の取り込み量と放出量の測定、人工衛星による植生被覆の検出、および作物収量の記録と組み合わせることによって得られている。Ciaisたちは、旱魃で生態系が炭素の吸収源から供給源に変わることによって気候の変化が加速するという、将来現れかねないパターンを示している可能性があると警告している。

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