Nature ハイライト

医学:アルツハイマー病の新たな標的

Nature 467, 7311

アルツハイマー病治療薬の研究では、主として、神経毒アミロイドβペプチドの脳への蓄積を低減させる化合物に焦点がしぼられてきた。この努力はほとんど実っていないが、その理由の1つは、γ-セクレターゼの作用を阻害する物質が重篤な副作用を引き起こすことである。なぜなら、そのような阻害物質は、多くの恒常性機能に必須のシグナル伝達タンパク質であるノッチのプロセシングも阻害してしまうためだ。今回、ノッチの切断に影響を及ぼすことなくアミロイドβの産生を選択的に制御するγ-セクレターゼ活性化タンパク質(GSAP)が発見され、アルツハイマー病治療薬の新たな標的となる可能性がでてきた。抗がん剤イマチニブ(グリベック)は、ノッチの切断に影響を及ぼすことなくアミロイドβを阻害することが知られており、この作用はGSAPに対する効果を介して起こることが明らかになった。このことは、イマチニブと違って血液脳関門を通過できるGSAP阻害薬ならば、アルツハイマー病の治療薬となる可能性があることを示唆している。

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