Nature ハイライト

環境:先カンブリア時代の緑化

Nature 460, 7256

過去10年間に行われた数十件の研究で、新原生代の炭酸塩岩における炭素同位体の変動が報告されており、地球の炭素循環の変動と関連付けられている。P KnauthとM Kennedy は、炭素同位体分析の一部として必ず得られるものだが、見過ごされることの多かった酸素同位体測定値(標本数は2万点を超える)に注目するという独特の視点から、それらのデータを検討した。そして、酸素同位体組成と炭素同位体組成の組み合わせが、よく研究されている顕生代の標本と一致するという予想外の結論が得られた。この顕生代の標本は、陸上のファイトマス(植物系バイオマス)に由来する、光合成で作られた炭素が地下水に運ばれて大規模に流入した沿岸の間隙水中で石化したものである。新原生代の炭酸塩における13C/12Cの広く報告されている低下は、炭素循環の変動ではなく、顕生代標本との類似性によって解釈するほうが無理がない。またそれは、先カンブリア時代末期の、光合成を行う藻類やコケ類、菌類からなる敷物で覆われた地球の「緑化」を示唆している可能性がある。酸素とファイトマスを生み出すこのような事象は、先カンブリア時代のほとんど微生物だけだった世界から、カンブリア紀の後生動物の世界への決定的な移行の間接的原因となった可能性さえある。

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