Nature ハイライト

Cover Story:量子浮揚:とらえにくかったCasimir-Lifshitz斥力の実験的測定

Nature 457, 7226

空間は完全に空っぽというわけではない。真空は、量子力学的エネルギーゆらぎで満ちあふれており、非常に接近した物体の間に引力を発生させることができる。この「Casimir-Lifshitz」力は、ナノマシンで静止摩擦力、つまり「スティクション」を引き起こすが、その大きさは非常に小さいだろうとされている。これまで報告されたのは引力相互作用のみだが、真空を特定媒体に置き換えれば、理論的にはCasimir-Lifshitz力は斥力になると考えられる。今回、このことが実験的に確認された。流体中の相互作用物質の系を慎重に選ぶことで、引力よりも弱いが、斥力が測定されたのである。いずれの力の大きさも、物質間の間隔が狭まるにつれて増大する。このような斥力によって、流体中の物体の量子浮揚がおそらく可能になると考えられ、静止摩擦力が非常に低い、新タイプのスイッチング可能なナノスケールデバイスにつながるかもしれない。浮揚は各物質の光学特性のみに依存する。表紙の左は、金の微小球とシリカ基板の間の斥力を示している。シリカを金に換えると、右のように力は引力に変わる(Letter p.170, N&V p.156)。

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