Nature ハイライト

物性:熱の入ったスピントロニクス

Nature 455, 7214

1821年、T J Seebeckは、熱から電気が発生しうることを発見した。この熱電効果、すなわちゼーベック効果は、発電に使われたり、熱電対で温度検知に使われたりしている。熱電対では、ゼーベック係数、すなわち温度差に対する発生電圧の比で定義される値が異なる2つの金属が接合されている。理論的には、熱電対の「スピントロニクス」版が存在すると考えられるが、今回、実際にそれが見いだされた。内田健一(慶応義塾大学)たちは、最近開発されたスピン・ホール効果に基づくスピン検出技術を用いて、スピン・ゼーベック効果を初めて実証し、またこの効果を使って、数ミリメートルの距離にわたって純粋なスピン流、つまり電荷の流れを伴わないスピンの流れを得た。スピン・ゼーベック効果は、「スピン電力(spin power)」を発生してスピントロニクス・デバイスを駆動できる。これは、サーモスピントロニクスへの道を開くものである。

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