Nature ハイライト
Cover Story:炭素の流れ:放射性炭素のアーカイブから河川が古代の炭素を大気中に放出していることが明らかに
Nature 642, 8066
河川は、主要な炭素供給源であり、表流水から二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)を大気中に放出している。これまで、こうした炭素の大部分は最近のバイオマス生産(過去70年ほどの間に分解されて河川系に流入した有機物)によるものと考えられてきた。しかし今回、J Deanたちは、河川から放出される炭素の約60%が、数百年から何千年、あるいはそれ以上前の古い炭素であることを明らかにしている。研究チームは、新規および既報の河川中の放射性炭素(14C)に関する測定結果をまとめ、世界各地の700近い河川流域を網羅するデータベースを構築した。彼らは、河川試料中の14C濃度を現在の大気中CO2の標準値と比較することで、河川炭素の年代を測定できた。今回の発見は、河川から古代の炭素がゆっくりと継続的に放出されていることを示唆しており、土地利用の変化によってその挙動がどう変わるかという新たな疑問を投げ掛けるものである。
2025年6月5日号の Nature ハイライト
天文学:既存モデルで説明できない矮小銀河のクラスター形成
極低温原子:一次元量子気体でのエニオンの観測
超伝導:ほぼ40 Kでバルク超伝導を示すニッケル酸化物
スピントロニクス:スピン分極を電圧制御できるマルチフェロイック材料
超蛍光:ペロブスカイトの高温超蛍光の起源
太陽電池:ペロブスカイト太陽電池の性能を向上させる金属内包フラーレン–ポリマー層
化学:立体化学情報を保持するラジカルカップリング
化学:ヘテロ環の炭素原子を窒素原子に置換する
海洋生物学:深海採掘が生態系に及ぼす影響の持続性
古生物学:脊椎動物の歯組織の最古の化石記録を巡る議論に新証拠
進化学:アメリカ先住民族の口述史をゲノミクスで補う
認知神経科学:意識理論の公開対決
ニューロン発生:iPS細胞で末梢から中枢への神経路を再現
ゲノミクス:トリパノソーマにおける抗原発現スイッチの分子機構
免疫学:安定なヒト誘導型制御性T細胞の作製
医学研究:老化に伴って蓄積する微生物代謝物がクローン造血を促す
創薬:これまで創薬不可能だった、NRAS変異を標的とする新薬の誕生
生化学:脂質輸送タンパク質が大量輸送に適したトンネルを作る
分子生物学:リボザイム中の水のネットワークを可視化する