Nature ハイライト

医学:危険がないわけではない

Nature 440, 7088

重症の免疫不全に対する遺伝子治療は、後にT細胞リンパ腫の発症を招く可能性があるようだ。I M Vermaたちは、マウスの研究から得られた知見を基に、遺伝子導入を含む治療法は、前臨床試験で長期の追跡調査を行ってから臨床試験に入るべきだと主張している。  Vermaたちが、X連鎖重症複合免疫不全症(X-SCID)のマウスに矯正治療用の遺伝子IL2RGを投与したところ、3分の1がT細胞リンパ腫を発症した。また、これらのリンパ腫の原因は、これまで考えられていたようながん遺伝子の発現亢進ではなく、IL2RGそのものが関係していることがわかった。  X-SCID症候群とは、インターロイキン-2受容体の構成成分であるIL2RGの発現異常によって起こるもので、この発現異常がリンパ球の生存や増殖を低下させてしまう。遺伝子治療により、患者のIL2RG発現を回復させて適応免疫を改善させることができる。  IL2RGに発がん性があるとこれまで考えられていなかったのは、研究期間がこうした作用を見つけられるほど十分な長さでなかったからだとVermaたちは論じており、遺伝子治療の前臨床試験段階では、もっと長期にわたる追跡調査を行うべきだと警告している。

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