Nature ハイライト

工学:チップの中へ光を押し込む

Nature 440, 7083

今週号ではS I Bozhevolnyiたちが、チップを使った情報技術で光信号を導き処理することのできる、新しい素子をいくつか紹介している。このような小型化した構造は、マイクロエレクトロニクス技術に匹敵するコンパクトな「フォトニクス」技術を確立するうえで主要な障害となる問題の1つ、つまり極めて小さいスケールでの光の操作がむずかしいという問題を解決するのに役に立つと思われる。  「マイクロフォトニクス」における重要な問題は、光がその波長より幅広いチャネルや穴部を通してしか正確に伝播できないという点だ。現在の光ファイバー通信では、約1.5マイクロメートル(1ミリの千分の1程度)の波長を使う。この波長は、現在使われているシリコンチップ上で電子が通るチャネルよりずっと大きい。  しかし、これに代わる別の方法が存在する。光波を使って金属表面上で電子を励起し、集団で波のような運動をさせる方法である。これは表面プラズモンとして知られており、このサイズ限界に制限されない。こうしたプラズモンのいくつかは、光の波長より非常に狭い金属のV字形溝の底に沿って、光波と電子波が結合した形で動けることをBozhevolnyiたちはこれまでに示していた。  今回彼らは、このようなチャネルが光信号を分岐・変調するフォトニクスデバイスとして動作するように形成できることを明らかにした。さらにこのようなV字形チャネルから、ビームスプリッターのようなフォトニクス技術では一般的な各種デバイスを作り、これらが遠隔通信では標準的な通信波長である赤外光信号でうまく作動することも示した。

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