Nature ハイライト
細胞生物学:PD-L1–PD-1の阻害は老化監視と加齢表現型を改善する
Nature 611, 7935
老化細胞の蓄積は加齢関連炎症の主原因であり、さまざまな加齢関連疾患の素因となる。しかし、この蓄積の根底にある分子基盤や、加齢過程改善の標的としての可能性についてはほとんど分かっていない。今回我々は、老化細胞は免疫チェックポイントタンパク質であるPD-L1(programmed death-ligand 1)を不均一に発現しており、PD-L1+老化細胞はin vivoで加齢とともに蓄積することを示す。PD-L1−細胞はT細胞による免疫監視に感受性があるが、PD-L1+細胞は老化関連分泌表現型(SASP)の存在下でも、こうした監視に抵抗性を示した。in vivoでのp16+細胞の単一細胞解析からは、PD-L1の発現はSASPレベルの高さと相関していることが明らかになった。この結果と一致して、自然老化マウス、あるいは正常肝臓または非アルコール性脂肪性肝炎を誘導したマウスモデルにPD-1(programmed cell death protein 1)抗体を投与すると、in vivoでp16+細胞の総数が減少しただけでなく、PD-L1+集団も活性化CD8+ T細胞依存的に減少し、さまざまな加齢関連表現型が改善した。これらの結果は、PD-L1の不均一な発現が、老化細胞の蓄積や加齢関連炎症に重要な役割を担っており、免疫チェックポイント阻害によるPD-L1+老化細胞の除去が、抗加齢治療の有望な戦略となり得ることを示唆している。
2022年11月10日号の Nature ハイライト
量子物理学:湾曲した時空を模擬する量子シミュレーター
原子核物理学:陽子のもう1つの謎
材料科学:高性能なn型導電性高分子の実現
材料科学:表面反応による逆構造型ペロブスカイト太陽電池の性能向上
化学:単原子触媒を担体上に「のり付け」する
材料化学:水と重水を分離する
気候科学:軌道離心率の変化による赤道太平洋の海面水温の季節変動
進化学:鳥類の骨格の進化には環境が複雑に影響した
遺伝学:免疫遺伝子の進化と黒死病の関連
微生物学:細菌のThoeris抗ファージ防御機構とファージによる回避機構
医療政策:COVID-19終息に向けた多国間コンセンサス
免疫学:APOEバリアントがCOVID-19に及ぼす影響
免疫学:機能性抗体に見られる軽鎖の一貫性
細胞生物学:免疫チェックポイントは老化と関係する
細胞生物学:粘度ががんの転移に関与
がんゲノミクス:急性骨髄性白血病でのクロマチン立体構造の変化
構造生物学:酵母SEA複合体のクライオ電子顕微鏡構造
腫瘍免疫学:侵害受容器ニューロンが腫瘍増殖を促す