Nature ハイライト

量子物理:落ち着かない気体

Nature 440, 7086

箱の中に仕切りで隔てられて2つの気体が入っているとすると、仕切りを取り除けば、その2つの気体は最後には完全に混じってしまうだろう。これは当たり前のようにみえる。実際、2つの気体が混合せず、しかも箱の中で位置を交換するように往復し続けるとしたら、むしろそのほうが奇妙である。  しかし、D Weissたちは、量子力学の法則に従うある種の気体が、分離状態のまま往復するという、まさにこのような芸当をやってのけることを発見した。いわゆるボーズ気体である数十?数百個のルビジウム原子からなる超低温の「雲」を、レーザービームで作ったスリット形のトラップ中に閉じ込めると、この雲は2つの塊に分かれた状態を保ち、これらの塊はトラップの端から端へいつまでも往復し続ける。  今週号でWeissたちは、これはニュートンの揺りかごの量子版だと述べている。ニュートンの揺りかごは、一列のボールが枠から吊るされている有名なおもちゃで、片端のボールを揺らして隣のボールにぶつけると反対側の端のボールが跳ね飛ばされるという動きが、カチカチと音を立てながら繰り返されるというものだ。  物理学的に言うと、トラップされたボーズ気体は熱化することを拒む。すなわち原子は、互いに衝突を繰り返した後も、統計的に不変な状態に落ち着くことがない。原子は実際にニュートンの揺りかごのボールのように衝突はするが、衝突によって原子のエネルギーがランダム化されることはなく、すべての粒子がほぼ同じようにふるまうようにはならない。Weissたちは、これらの系は多粒子系の複雑なふるまいを解明する手段になるばかりでなく、例えば超高感度な力検出器といった実用的な応用面でも有望であると述べている。

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