Nature ハイライト

計量学:交流コヒーレント量子位相スリップ効果に起因する量子化された電流ステップ

Nature 608, 7921

1962年に予測され、クーパー対の光子支援トンネリングから生じる量子化された「電圧ステップ」(シャピロステップ)として、1963年に実験的に観測された交流ジョセフソン効果は、量子力学の最も基本的な現象の1つであるとともに、計測学の量子電圧標準に不可欠である。交流コヒーレント量子位相スリップ(CQPS)は、超伝導ナノワイヤーを通る磁束に光子支援トンネリングが生じる物理的に双対な効果であり、量子化された「電流ステップ」として現れると予想されている。また、交流CQPSの基本的な物理的重要性は、量子メトロロジートライアングルを閉じるのに欠けている要素である、将来の電流標準の実用的な重要性によっても補足される。2012年にCQPSは、超伝導ナノワイヤーにおける磁束量子の重ね合わせとして実証された。しかし、超伝導体における直接的で平坦な電流ステップは、これまで唯一得られていない超伝導の基本的効果であるが、適切な材料がなく回路工学に難題があるため実現できなかった。今回我々は、超伝導ナノワイヤーにおいて二重のシャピロステップを直接観測したことを報告する。鋭いステップは、電流値8.3 nAで26 GHzの最高周波数まで明瞭であり、現在の装置設定の帯域幅に制限されている。この電流ステップは、30年前に小型のジョセフソン接合で理論的に予測されていた。しかし、ジョセフソン接合ではブロードニングが避けられないため、電流ステップの実験による直接観測が妨げられている。我々は、誘導環境に細いNbNナノワイヤーを置くことで、この問題を解決している。

2022年8月4日号の Nature ハイライト

目次へ戻る

プライバシーマーク制度