Nature ハイライト

遺伝学:ヒトのエンハンサー配列とプロモーター配列の適合性ルール

Nature 607, 7917

ヒトゲノム中の遺伝子調節は、近接する特定のプロモーターを離れた所から活性化する遠位エンハンサーによって制御されている。このような特異性のモデルとして提案されているのは、プロモーターには一部のエンハンサーに対する選択性が塩基配列によってコードされていて、これが相互作用する一群の転写因子や補因子などによって仲介されるというものである。この「生化学的適合性」モデルは、個々のヒトプロモーターに関する観察結果や、ショウジョウバエ(Drosophila)でのゲノム規模の計測によって裏付けられている。しかし、ヒトのエンハンサーとプロモーターがどの程度本質的に適合しているのかは、いまだに系統立てて調べられておらず、それらの活性がRNA発現の制御にどのように結び付いているのかも不明である。今回我々は、ExP STARR-seq(enhancer × promotor self-transcribing active regulatory region sequencing)と呼ばれるハイスループットのレポーターアッセイを設計し、これを使ってヒトK562細胞のエンハンサー1000種、プロモーター1000種の組み合わせによる適合性を測定した。その結果、エンハンサーとプロモーターの適合性について、単純な法則が見つかった。つまり、ほとんどのエンハンサーは全てのプロモーターを同程度に活性化し、エンハンサーとプロモーターそれぞれの固有の活性が掛け合わされて、RNAの出力が決まるのである(R2 = 0.82)。また、2つのクラスのエンハンサーとプロモーターは、わずかに選択的な影響を示した。ハウスキーピング遺伝子のプロモーターには、GABPAやYY1のような因子に対する活性化モチーフが組み込まれていて、それが遠位エンハンサーに対するプロモーターの応答性を低下させる。発現の変動の大きい遺伝子のプロモーターにはこのようなモチーフが欠けており、エンハンサーに対して示す応答が強くなる。これらのエンハンサー–プロモーター適合性の系統立った評価により、エンハンサーとプロモーターのクラスによって微調整された掛け算モデルがヒトゲノムの遺伝子転写を制御していることが示された。

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