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化学:イオン性液体も気体になる

Nature 439, 7078

イオン性液体は、工業化学向けの「環境にやさしい」溶剤として推奨されている。というのも、イオン性液体はまったく蒸発せず、毒性ガスを放出しないと考えられているからだ。しかしL Rebeloたちの報告によると、必ずしもそうとは言えないようだ。実際には一部のイオン性液体は蒸発し、そのため蒸留も可能であることが示された。  このことは、これらの液体の環境にやさしいという実績を損なうものではない。イオン性液体は、ほとんどの普通の液体のように中性分子からなるのではなく、荷電イオンから構成されている。Rebeloたちが検討した各種イオン性液体は、たしかに揮発性が非常に低く、液体表面から逃げ出す蒸気はほんのわずかだ。しかし200〜300℃に加熱するとイオン性液体は蒸発し、冷却すると再び液化する。   これは好ましい性質であるようだ。なぜなら、蒸留によって液体の純度を高めることができるからである。これによって、溶剤として使用した後にリサイクルが可能となる。こういう蒸留が不可能であると信じられてきたために、これまでイオン性液体は、ほかの点ではメリットが大きいと思われる一部の用途で使えなかったのである。

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