Nature ハイライト

細胞生物学:MAP3K2によって調節される腸管ストローマ細胞は異なった幹細胞ニッチを規定する

Nature 592, 7855

腸管ストローマ細胞は、腸幹細胞の増殖と分化を調節することが知られている。しかし、この多様なストローマ細胞集団が組織の恒常性と修復を維持する正確な細胞機構や分子機構はほとんど解明されていない。今回我々は、MRISC(MAP3K2-regulated intestinal stromal cell)と命名した腸管ストローマ細胞の細胞群について報告し、これらがマウスで、腸管損傷後にWNTアゴニストであるR-spondin 1を供給する主要な細胞であることを示す。MRISCは、これまでに報告された他の腸管ストローマ細胞のサブセットとはエピジェネティック的にもトランスクリプトーム的にも異なり、戦略的に大腸陰窩の基部に局在して、R-spondin 1の産生促進を介してLGR5+腸幹細胞を維持し、急性の腸管損傷を防ぐ働きをしている。機構的には、このMAP3K2特異的機能は、これまで知られていなかった活性酸素種(ROS)–MAP3K2–ERK5–KLF2軸を介しており、R-spondin 1の産生を増強する。これらの結果から、MRISCは腸幹細胞ニッチの重要な構成要素であり、MAP3K2特異的に依存してWNTシグナル伝達を増強し、損傷した腸の再生を促すことが明らかになった。

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