Nature ハイライト

分子生物学:H1ヒストンは局所的なクロマチン凝縮によってエピジェネティックな全体像を制御している

Nature 589, 7841

H1リンカーヒストンは最も豊富に存在するクロマチン結合タンパク質である。in vitro研究では、H1リンカーヒストンとクロマチンの結合はヌクレオソームの間隔を決定し、並んだヌクレオソームをさらに凝縮したクロマチン構造に折りたためるようにすることが示されている。しかし、H1のin vivoでの役割はほとんど解明されていない。本論文では、H1の局所密度が、ゲノムの凝縮を促進することにより、抑制的なクロマチンドメインと活性なクロマチンドメインのバランスを制御していることを示す。我々は、条件付き三重H1ノックアウトマウス系統を作出し、造血細胞でH1を枯渇させた。T細胞でのH1の枯渇はT細胞活性化遺伝子群の抑制解除につながり、この過程は正常なT細胞活性化とよく似ている。正常CD8+ T細胞とH1が枯渇したCD8+ T細胞でのクロマチン構造を比較すると、H1を介したクロマチン凝縮はH1を平均よりも高いレベルで含むゲノム領域、つまりHi-C(chromosome conformation capture)B区画およびHi-C A区画のPRC2(polycomb repressive complex 2)で標識される領域で主に起こることが明らかになった。H1の化学量論的存在量の低下は、H3K27メチル化の減少、H3K36メチル化の増加、B区画からA区画への移行、区画間の相互作用頻度の上昇につながった。in vitroでは、H1はPRC2が仲介するH3K27メチル化を促進し、NSD2が仲介するH3K36メチル化を抑制した。機構的には、H1はクロマチン基質の物理的凝縮を促進することによって、このような逆向きの影響を仲介している。我々の結果は、H1が遺伝子抑制の重要な調節因子であって、クロマチン凝縮、3Dゲノム構成やエピジェネティックな全体像の局所的な制御を介してその機能を果たしていることを確証している。

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