がん治療:ACLYの阻害は腫瘍免疫を促進し、肝臓がんを抑制する
Nature 645, 8080 doi: 10.1038/s41586-025-09297-0
免疫抑制性の腫瘍微小環境は、代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)によって引き起こされる肝細胞がん(HCC)などのがん(MASH-HCC)でよく見られる。免疫細胞の代謝はエフェクターの機能に影響を及ぼすが、免疫原性に対する腫瘍代謝の影響は解明があまり進んでいない。ATPクエン酸リアーゼ(ACLY)は、基質の利用可能性とミトコンドリア代謝を、脂質生合成と遺伝子調節に結び付けている。ACLYの阻害はさまざまな腫瘍で抗増殖的影響を示すが、阻害剤開発の際の難問や代償的に働く代謝経路の存在によって、臨床応用は制限されてきた。今回我々は、ヒト疾患を模倣したMASH-HCCマウスモデルを用いて、肝細胞および腫瘍でACLYを遺伝学的に阻害したところ、腫瘍性病変が70%以上減少したことを報告する。この経路の治療的有効性を評価するために、新規な小分子ACLY阻害剤EVT0185(6-[4-(5-carboxy-5-methyl-hexyl)-phenyl]–2,2-dimethyl hexanoic acid)を、表現型スクリーニングによって明らかにした。EVT0185は肝臓でSLC27A2によってCoAチオエステルに変換され、EVT0185-CoAはACLYのCoA結合部位と直接に相互作用することがクライオ電子顕微鏡による構造解析によって明らかになった。MASH-HCCの3種類のマウスモデルにEVT0185を単剤療法として経口投与すると、腫瘍負荷が急激に減少し、チロシンキナーゼ阻害剤や免疫療法などの現在の標準的医療の効果が強化された。マウスとヒトでの空間トランスクリプトームプロファイリングによって、腫瘍でのACLYの減少が、ケモカインCXCL13、腫瘍浸潤B細胞、三次リンパ様構造の増加と関連付けられた。B細胞を枯渇させると、ACLY阻害の抗腫瘍効果が阻害された。まとめるとこれらの知見は、腫瘍代謝を標的として免疫機能を配置し直し、MASH-HCCでのがん進行抑制を可能にする仕組みを示している。

