神経科学:シロアシマウス類の種特異的な防御行動の神経基盤
Nature 645, 8080 doi: 10.1038/s41586-025-09241-2
迫り来る捕食者の脅威から逃れることは、動物の生存に不可欠である。効果的な防衛戦略は、近縁の動物種間でも異なることがある。しかし、そうした種特異的な行動の神経機構はよく分かっていない。今回我々は、シロアシマウス属(Peromyscus)の2つの姉妹種が、同一の接近刺激に対して異なる反応を示すことを見いだした。植生が密な環境を生息地とするシカシロアシマウス(P. maniculatus)は主に逃走するのに対し、開けた土地に特化したハイイロシロアシマウス(P. polionotus)は短時間のすくみ行動を示す。この差は種特異的な逃避閾値に起因しており、おおむね文脈とは無関係で、視覚的な脅威刺激でも聴覚的な脅威刺激でも同様に見られる。我々は、免疫組織化学と電気生理学記録を用いて、視覚的脅威刺激が上丘を活性化するのは両種で同じだが、背側水道周囲灰白質(dPAG)が行動を駆動する役割は異なっていることを見いだした。シカシロアシマウスでは、dPAGの活動が逃走の速さに比例するが、ハイイロシロアシマウスのdPAG神経活動は、視覚的に刺激された逃走の際も運動とはほとんど相関していなかった。また、dPAGニューロンを光遺伝学的に活性化したところ、シカシロアシマウスでは加速が引き起こされたが、ハイイロシロアシマウスではそうした変化は見られなかった。さらに、接近刺激中にdPAGニューロンを薬物遺伝学的に抑制すると、シカシロアシマウスの逃走の開始が遅れ、ハイイロシロアシマウスの行動に近づいた。総合すると今回の研究は、種特異的な逃避の閾値を、末梢感覚ニューロンより下流の中枢回路の結節点までたどるとともに、生態学的に重要な行動の差が、哺乳類脳の特定の領域にあることを突き止めている。

