がん:卵巣がんでは継続的に起こる全ゲノム倍加が進化可能性と免疫を形作る
Nature 644, 8078 doi: 10.1038/s41586-025-09240-3
全ゲノム倍加(WGD)はヒトのがんでよく見られる特徴であり、腫瘍進行、薬剤耐性および転移と関連している。今回我々は、WGDが患者の腫瘍で体細胞の進化と免疫回避に与える影響を単一細胞分解能で検討した。単一細胞全ゲノム塩基配列解読を用いて、41人の患者由来の70の高異型度漿液性卵巣がん試料(3万260腫瘍ゲノム)を解析し、WGDが進行中の変異過程の1つであることを示すほぼ一般的な証拠が観察された。WGDは、細胞間の多様性の増大と染色体の高い誤分配率、その結果としての微小核形成と関連していた。我々は、変異に基づいてWGDの発生時期を推定する手法を開発し(doubleTimeと命名)、WGDが腫瘍の進化を駆動し得る特異的な複数の様式を明らかにした。すなわち、早期に固定化された後に大きく多様化する様式、コピー数多様性が既に存在する背景の下で複数のWGD事象が並行して生じる様式、小型のクローンや個々の細胞で進化的に遅れたWGDが起こる様式である。さらに、対応付けした単一細胞RNA塩基配列解読法と高分解能免疫蛍光顕微鏡法を用いて、継続中の染色体不安定性によって炎症性シグナル伝達およびcGAS–STING経路の活性化が生じるが、この活性化は主として二倍体腫瘍(WGD-low)に限られることを見いだした。対照的に、WGDが大部分の腫瘍(WGD-high)では、誤分配が増加しているにもかかわらず、細胞周期の調節異常、STING1の抑制、免疫抑制性の表現型状態が見られた。まとめるとこれらの知見は、高異型度漿液性卵巣がんではWGDは進行中の変異過程であり、進化可能性と免疫調節異常を促進していることを立証している。

