腫瘍免疫学:バーコード化したウイルスの追跡により明らかになったアストロサイト–グリオーマ間の免疫抑制的相互作用
Nature 644, 8078 doi: 10.1038/s41586-025-09191-9
グリオブラストーマ(神経膠芽腫、GBM)は最も致死性の高い原発性脳悪性腫瘍である。GBMの腫瘍微小環境(TME)における免疫抑制は免疫標的療法の重要な障壁だが、TMEにおけるGBMの免疫調節機構についての理解は十分ではない。今回我々は、ウイルスバーコード相互作用追跡という、GBMの臨床試料および前臨床モデルでのTMEの細胞間コミュニケーションを単一細胞分解能で解析するために考案された方法について述べる。我々は、この手法を単一細胞塩基配列解読、バルクRNA塩基配列解読、器官型培養を行ったヒトGBM、in vivoでの細胞特異的CRISPR–Cas9駆動型の遺伝子摂動に加えて、ヒトおよびマウスの実験系と組み合わせることで、アネキシンA1–ホルミルペプチド受容体1(ANXA1–FPR1)を介したアストロサイトとGBMの間の双方向コミュニケーション経路(腫瘍特異的免疫を制限する)を明らかにした。FPR1は腫瘍細胞での免疫原性ネクロトーシスを抑制し、ANXA1はアストロサイトでNF-κBとインフラマソーム活性化を抑制する。アストロサイトでのANXA1発現とがん細胞でのFPR1発現は、GBM患者の転帰不良と関連している。アストロサイト–グリオーマ(神経膠腫)間のANXA1–FPR1シグナル伝達を不活化したところ、樹状細胞、T細胞およびマクロファージの応答が増強され、これによって腫瘍特異的なCD8+ T細胞の浸潤が増加してT細胞疲弊が制限された。以上をまとめると、我々は臨床試料および前臨床モデルでのTMEの細胞間相互作用を単一細胞分解能で解析する方法を開発し、その方法を用いて、ANXA1–FPR1を介したアストロサイト–GBM間の双方向コミュニケーションが免疫回避と腫瘍進行のドライバーであることを明らかにした。

