Article

ニューロン発達:空間トランスクリプトミクスで明らかになったヒト大脳皮質の層と領域の指定

Nature 644, 8075 doi: 10.1038/s41586-025-09010-1

ヒトの大脳皮質は、分子的・構造的に異なる6つの層と数十の領域からなっている。単一細胞トランスクリプトーム研究で、ヒト皮質の発達についての分子的な特徴付けは進んできたが、細胞を解離させる際に空間的な状況が失われるため、まだ相当な不明点が残っている。今回我々は、MERFISH(multiplexed error-robust fluorescence in situ hybridization)法を、深層学習をベースにした細胞核セグメンテーションで強化して、ヒト胎生期大脳皮質の分子・細胞・細胞構築の発達を、単一細胞分解能で空間的に解析した。この1800万個以上の細胞を含む広域空間アトラスは、7つの発達時点での、8つの皮質領域にわたるものである。我々は、細胞構築上の層構造が発達する3カ月前に、興奮性ニューロンのサブタイプの層状分布によって特定可能な6層構造が、既に樹立されていることを明らかにした。注目すべきは、妊娠中期に皮質領域指定の2つの異なるモードがあるのが分かったことである。すなわち、(1)前後軸に沿って皮質領域の大部分で観察される連続的で漸進的な遷移、(2)胎生20週という早期に、一次視覚野(V1)と二次視覚野(V2)の間で特異的に特定される不連続で急峻な境界が見いだされた。V1–V2ニューロンサブタイプにおけるこの急激な二値的な遷移は、妊娠中期の皮質領域化は勾配のような遷移のみによるとする見解に疑問を呈するものである。また、単一核RNA塩基配列解読にMERFISHを組み込むことにより、V1特異的な第4層ニューロンで、シナプス形成の早期の上方調節が起こることが分かった。まとめると今回の知見は、皮質の層と領域の分子的指定の決定における空間的関係の重要な役割を明確に示すものである。本研究は、空間分解された単一細胞解析パラダイムを樹立して、ヒト脳の包括的発達アトラスの構築に向けた道を開くものである。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度