Article

合成生物学:遺伝暗号を交換することでウイルス感染と遺伝子伝播を防ぐ

Nature 615, 7953 doi: 10.1038/s41586-023-05824-z

生物の遺伝暗号を操作することは、ウイルス感染と遺伝子伝播を防いで、自然生態系に対するファイアウォールとなると提唱されている。しかし、膨大な数のウイルスや可動性遺伝因子が翻訳装置の一部をコードしており、遺伝暗号に基づくファイアウォールを無効化する可能性がある。今回我々は、このような可動性転移RNA(tRNA)が、大腸菌(Escherichia coli)において、64種のコドンのうち3種とそれまで不可欠だったコグネイトtRNAおよび終結因子の遺伝子をゲノム規模で除去したにもかかわらず、遺伝子伝播を可能にし、ウイルス複製を許容することを示す。次に、非常に効率よくコドンの再割り当てを行うウイルスtRNAを発見したことで、翻訳の際にセリンコドン6個のうちの2個をロイシンに再割り当てしアミノ酸を交換した遺伝暗号を持つ細胞の開発が可能になり、遺伝的ファイアウォールが確立された。このアミノ酸を交換した遺伝暗号は、ウイルスプロテオームの翻訳を誤らせることによって、ウイルス感染に対する抵抗性を細胞に付与し、また、ロイシンを必要とするタンパク質の産生をセリンコドン依存的にするよう操作したことで、合成遺伝情報の漏出を防いだ。これらの細胞は、ウイルス抵抗性によって野生型細胞に対する選択優位性を持つ可能性があるため、我々は第三のコドンを転用し、自然界に見られないアミノ酸への依存性により、このウイルス抵抗性宿主を生物学的に封じ込めた。これらの結果から、どのような生物にも天然の全てのウイルスに対する抵抗性を安全に付与でき、遺伝子組換え生物での遺伝情報の流出入を防ぐための、一般的戦略の基盤が得られるかもしれない。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度