細胞生物学:第三の細胞内ループを介したGPCRシグナル伝達の自己調節
Nature 615, 7953 doi: 10.1038/s41586-023-05789-z
折りたたまれたGタンパク質共役受容体(GPCR)の第三の細胞内ループ(ICL3)は、受容体活性化の下流のシグナル伝達過程で重要な働きをする。しかし、ICL3がはっきり決まった構造を持たないことと、GPCRの間でICL3のアミノ酸配列が非常に多様であることとが組み合わさって、受容体シグナル伝達へのICL3の関与を詳しく明らかにするのは厄介な問題となっている。β2アドレナリン受容体(β2AR)に注目して行われたこれまでの研究により、ICL3は受容体活性化とシグナル伝達の過程に構造レベルで関与していることが示唆されている。今回我々は、ICL3が受容体のGタンパク質結合部位が遮断された状態と露出された状態の間でのコンホメーションの動的平衡を介して受容体活性を自己調節していることを観察し、β2ARシグナル伝達でのICL3の役割について機構面からの手掛かりを得た。この平衡は受容体の薬理学的性質に重要であることが、Gタンパク質を模倣したエフェクターがICL3の結合部位を露出状態に偏らせて受容体をアロステリックに活性化することによって実証された。また、ICL3がシグナル伝達の特異性を、受容体に弱く共役するGタンパク質サブタイプと受容体との共役を阻害することによって調節していることも、我々の知見から明らかになった。ICL3の配列は非常に多様だが、ICL3を介したこの負のGタンパク質選択機構は、GPCRスーパーファミリーにわたって広く見られ、GPCRがGタンパク質サブタイプ選択的なシグナル伝達を行う既知の機構が、これまで知られていた以上に幅広いことが示された。これらの知見を総合すると、ICL3は受容体特異的リガンドやシグナル伝達経路特異的リガンドに対するアロステリック部位であると考えられる。

