Article

ウイルス学:HIV-1のVifのヒトAPOBEC3Gに対する拮抗作用の構造的基盤

Nature 615, 7953 doi: 10.1038/s41586-023-05779-1

APOBEC3(A3)タンパク質は宿主の細胞タンパク質で抗ウイルス作用を持ち、多様なウイルスファミリーのゲノムに高頻度変異を引き起こす。レトロウイルスでこの過程が起こるには、ウイルス粒子にA3が取り込まれる必要がある。レンチウイルス類にはVifというタンパク質がコードされており、これがA3ファミリーのタンパク質を分解の標的とすることによってA3と拮抗する。宿主はA3の多様化によってVifから逃れる一方で、霊長類のレンチウイルスはVifの適応によって異種間伝播を可能にする。このような「分子レベルの軍拡競争」が構造レベルでどのように展開するのかは、よく分かっていない。今回我々は、HIV-1のVif、それにウイルスに乗っ取られた細胞タンパク質(ユビキチンを介したタンパク質分解を促進する)と結合したヒトAPOBEC3G(A3G)のクライオ電子顕微鏡構造を明らかにした。HIV-1の出現につながった異種間伝播事象を含め、分子レベルの軍拡競争はVifとA3G間の相互作用の小さな表面によって説明される。意外なことに、VifとA3Gの相互作用ではRNAが分子接着剤となっていて、それによりVifがユビキチン依存性の機構とユビキチン非依存性の機構の両方でA3Gを抑制できることが分かった。これらの結果は、VifはA3Gがウイルスにとって最も危険な形態の時(RNAに結合し、ウイルス粒子へ取り込まれる途中)にこれを捕捉することによってA3Gに拮抗し、ウイルスが制限されるのを防止するというモデルを示唆している。Vifは、ウイルスを制限するのに必要な重要な表面をふさぐことでA3Gの脆弱性をうまく利用しており、これは、宿主の抗ウイルス遺伝子に対するウイルスの拮抗戦略に必要な重要な残基の配置をRNA結合が助けているという一般的な機構の存在を示唆している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度