がん:微生物相由来の3-IAAは膵臓がんでの化学療法の有効性に影響する
Nature 615, 7950 doi: 10.1038/s41586-023-05728-y
膵管腺がん(PDAC)は、転移性疾患の発生率が高く、治療応答が限定的であるため、2040年には死亡率が2番目に高いがんになると予想されている。PDACの一次治療である化学療法に応答する患者は全体の半数に達せず、遺伝的変化のみではこの結果を説明できない。食餌は治療応答に影響を与えることがある環境因子だが、PDACでの食餌の役割は明らかにされていない。今回我々は、ショットガンメタゲノム塩基配列解読とメタボロームスクリーニングを用いて、治療に応答する患者には微生物相由来のトリプトファン代謝物であるインドール-3-酢酸(3-IAA)が豊富に存在することを明らかにする。糞便微生物相移植、トリプトファンの短期の食餌操作および3-IAAの経口投与は、PDACのヒト化ノトバイオートマウスモデルでの化学療法の有効性を高めた。機能喪失実験と機能獲得実験を組み合わせて用い、3-IAAと化学療法の有効性は、好中球由来のミエロペルオキシダーゼによりライセンス化されることが明らかになった。ミエロペルオキシダーゼは3-IAAを酸化し、これと化学療法を組み合わせると活性酸素種(ROS)分解酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)3とGPX7の下方調節が誘導される。この全てが、がん細胞でのROS集積とオートファジーの下方調節をもたらす結果となり、がん細胞の代謝適応度が低下し、最終的に増殖が抑制される。ヒトでは、2つの独立したPDACコホートで3-IAAレベルと治療有効性の間に有意な相関が観察された。まとめると、この研究によって、PDACの治療に臨床的関わりを持つ微生物相由来代謝物が明らかになり、がん患者の治療の間に栄養介入を検討するきっかけがもたらされた。

