分子考古学:後期旧石器時代から新石器時代のヨーロッパの狩猟採集民についての古代ゲノミクス
Nature 615, 7950 doi: 10.1038/s41586-023-05726-0
現生人類は4万5000年以上にわたりヨーロッパに居住してきた。しかし、古代の狩猟採集民の遺伝的な近縁度や遺伝的構造についての我々の知識は、この時代のヒト遺骸が少なく、分子的な保存状態が悪いため限られている。今回我々は、古代狩猟採集民の356例のゲノムを解析した。これには、ユーラシアの西部および中央部の14カ国から得られた、3万5000~5000年前の116人の新しいゲノムデータが含まれている。後期旧石器時代のヨーロッパ西部のグラヴェット文化の遺物群と関連付けられているヒト集団の遺伝的祖先プロファイルが特定され、このプロファイルはグラヴェット文化に関係するヨーロッパの中部および南部の同時代のヒト集団とは異なっているが、先行するオーリニャック文化に関連するヒト集団のプロファイルと類似していることが分かった。この祖先系プロファイルは、最終氷期極大期(2万5000~1万9000年前)の間はソリュートレ文化に関連するヨーロッパ南西部のヒト集団で、その後は、最終氷期極大期後に北東へと再拡大した続くマドレーヌ文化に関連するヒト集団で存続した。これに対し、ヨーロッパ南部では遺伝的転換が明らかになり、これは、最終氷期極大期頃にヒト集団がこの地域で入れ替わり、これに伴ってエピグラヴェット文化に関連する集団が北から南へ分散したことを示唆している。エピグラヴェット文化に関連する祖先集団は、少なくとも1万4000年前から、南部からヨーロッパ全域に広がり、マドレーヌ文化に関連する遺伝子プールの大部分と置き換わった。中石器時代の初めにかかる限られた混合の期間の後、ヨーロッパの西部と東部の狩猟採集民の間に遺伝的相互作用があったことが分かり、これらの狩猟採集民には表現型的に重要なバリアントに顕著な違いがあるという特徴も明らかになった。

