Article

コロナウイルス:スパイクタンパク質とnsp6はSARS-CoV-2オミクロン株BA.1系統の弱毒化の主要決定因子である

Nature 615, 7950 doi: 10.1038/s41586-023-05697-2

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のオミクロン変異株は、これまでに知られている他の主要な変異株に比べ、免疫回避能が高く、毒力は弱い。オミクロン株のスパイク(S)タンパク質には非常に多数の変異が存在し、これが、こうした表現型の主要な駆動要因だと考えられている。今回我々は、従来型SARS-CoV-2単離株の遺伝的背景にオミクロン株(BA.1系統)のS遺伝子をコードした組換えキメラSARS-CoV-2を作製し、このウイルスと流行している天然のオミクロン株とを比較した。このオミクロン株のSを持つキメラウイルスは、ワクチンによって誘導される体液性免疫をロバストに回避し、これは主に受容体結合モチーフ内の変異が原因であったが、天然のオミクロン株とは違って、細胞株や初代培養類似の遠位肺細胞で効率よく複製した。K18-hACE2マウスでも同様に、オミクロン株Sを持つウイルスによる疾患の重症度は従来型ウイルスより低いものの、その毒力はオミクロン株レベルまでは下がらなかった。さらに調べたところ、Sタンパク質に加えて非構造タンパク質6(nsp6)の変異は、オミクロン株の弱毒化した表現型を再現するのに十分であることが分かった。この結果は、オミクロン株のワクチン回避はSタンパク質の変異によって引き起こされるが、オミクロン株の病原性は、Sタンパク質内とSタンパク質外の変異の両方によって決定されることを示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度