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気候科学:アジアの給水塔の持続可能性を脅かす海洋性気候の変化
Nature 615, 7950 doi: 10.1038/s41586-022-05643-8
アジアの給水塔と呼ばれるチベット高原(TP)を囲むアジア高山域(HMA)の水資源の持続可能性は、HMAが数百万人の人々を水ストレスから守っていることから、広く懸念されている。しかし、TPの陸域貯水量(TWS)に見られる不均一な傾向の背後にある機構は、まだよく分かっていない。今回我々は、ラグランジュ粒子分散モデルと人工衛星観測を用いて、2003〜2016年のTP南部における月間約1 GtのTWSの減少の原因が、偏西風によって運ばれた北大西洋南東部からの降水量と蒸発量の差(PME)の不足であることを示す。また、HMAが、PMEの不足がTP中央部へと広がるのを妨げ、これによってTWSが月間約0.5 Gt増加することを示す。さらに、温暖化による雪や氷河の融解と乾燥によるHMAでのTWSの減少が、HMAの山々のブロッキングを弱め、これによってTPのTWSの不足が2009年以降持続的に北方へ拡大していることが分かった。2020~2021年の人工衛星観測によって確認された2つの排出シナリオでの将来予測は、21世紀末までにシナリオSSP245ではTPの最大84%が、シナリオSSP585では最大97%がTWS不足に悩まされる可能性があることを示唆している。今回の知見は、HMAの持続不可能な水系への軌跡を示しており、これは下流の水ストレスを悪化させる可能性がある。

