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医学研究:FXRの阻害はACE2を減少させることでSARS-CoV-2感染を防御する可能性がある

Nature 615, 7950 doi: 10.1038/s41586-022-05594-0

アンギオテンシン変換酵素2(ACE2)のような、宿主のウイルス受容体の調節による重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染防御は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して、ワクチン接種を補完する新たな化学予防的方法となる可能性がある。しかし、ACE2の発現を制御する機構は明らかにされていない。今回我々は、ファルネソイドX受容体(FXR)が、消化器系や呼吸器系などCOVID-19の影響を受ける複数の組織における、ACE2の転写の直接的な調節因子であることを示す。次に我々は、市販の化合物であるz-ググルステロンや特許の切れた薬であるウルソデオキシコール酸(UDCA)を使って、ヒトの肺や胆管細胞、腸オルガノイド、マウスやハムスターのこれらに対応する組織でFXRシグナル伝達を減少させ、ACE2の発現を低下させた。UDCAを介したACE2の発現低下は、in vitroやin vivo、またex situで灌流させたヒト肺および肝臓で、SARS-CoV-2感染に対する感受性を減少させた。加えて、UDCAはヒト鼻上皮でのACE2発現を低下させることも分かった。さらに我々は、後ろ向きレジストリデータを用いて、UDCAの治療とSARS-CoV-2感染後の良好な臨床転帰との間に相関があることを見いだし、これらの知見を、肝移植レシピエントの独立した検証コホートで確認した。結論として、FXRがACE2の発現を制御する役割を担っていることが明らかになり、この経路の調節がSARS-CoV-2感染の抑制に有益である証拠が得られ、今後の臨床試験のための道が開かれた。

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