Article
気候科学:東スウェイツ氷河接地帯における抑制された底面融解
Nature 614, 7948 doi: 10.1038/s41586-022-05586-0
スウェイツ氷河は、南極で最も急速に変化している氷–海洋系の1つである。スウェイツ氷河の集水域内部の氷床の大部分は、内陸に向かって深くなっている岩盤に海面下で接地しているため、急速で不可逆的な氷の損失を起こしやすく、全球の海水準を50 cm以上上昇させる可能性がある。氷の損失の速さや広がり、そして氷の損失が不可逆的に進むかどうかは、海洋の条件と、スウェイツ氷河が浮かび始める接地帯の領域内部の底面融解によって決まるが、そのどちらもほとんど分かっていない。今回我々は、熱水掘削孔による観測を用いて、スウェイツ東棚氷(TEIS)の接地帯は、温度がin situの氷点よりかなり高い、極めて安定した暖かい水柱で特徴付けられることを示す。こうした温度の高い条件にもかかわらず、氷と海洋の境界層では流速が低く密度成層が強いため、氷の底面への熱の鉛直混合が能動的に制限され、その結果、底面の融解が強く抑制される。今回の結果は、海水準の予測を行うのに用いられている棚氷底面融解の標準的モデルでは、この極めて重要な氷河の下で観測された融解速度を再現できず、急速で潜在的に不安定な接地線の後退は、比較的控えめな底面融解速度と関連している可能性があることを示している。

