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遺伝学:BRD8はp53ネットワークのエピジェネティックな再プログラム化によってグリオブラストーマを維持する
Nature 613, 7942 doi: 10.1038/s41586-022-05551-x
TP53にコードされているp53が持つ腫瘍抑制機能の阻害は、ヒトでのがん発生に極めて重要である。しかし、最もよく見られる成人の脳悪性腫瘍で致死的なグリオブラストーマ(GBM:神経膠芽腫)症例の大部分ではp53は変異していない。つまり、TP53野生型(TP53WT)GBMでp53を介した腫瘍抑制が無効になる仕組みはまだ分かっていない。今回我々は、GBM特異的なエピジェネティック機構について報告する。この機構では、クロマチン調節因子であるBRD8(bromodomain-containing protein 8)が、EP400ヒストンアセチルトランスフェラーゼ複合体を介して、p53標的座位でH2AZの占有を維持する。この機構により、抑制性のクロマチン状態が引き起こされ、これがp53による転写活性化を防止して、増殖が維持される。BRD8のブロモドメインを標的とすると、H2AZが取り除かれてクロマチンに接近しやすくなり、p53による転写活性化が起こる。TP53WT GBMでは、次いで細胞周期の停止が引き起こされて、腫瘍が抑制される。患者由来GBMの増殖中の単一細胞では、BRD8がH2AZと共に高発現しており、p53のカノニカルな標的でp21をコードするCDKN1Aとは逆相関していることは、これらの知見と一致する。この研究は、BRD8が、治療法が数十年にわたって改善されていない悪性腫瘍の選択的でエピジェネティックな脆弱性であることを明らかにしている。また、BRD8のブロモドメインを標的とすることは、TP53WT GBM患者の有望な治療戦略になるかもしれない。

