分子生物学:細胞質のRループ由来RNA–DNAハイブリッドは免疫応答を活性化する
Nature 613, 7942 doi: 10.1038/s41586-022-05545-9
RループはRNA–DNAハイブリッドを含む核酸で、細胞内で重要な役割を担っている。Rループの動態の脱調節はDNAの損傷やゲノムの不安定性につながることがあり、脱調節にはXPGのようなエンドヌクレアーゼの作用が関係していることが示されている。しかし、酵素によるこのようなプロセシングの機構とそれが細胞に与える影響は、いまだに明らかになっていない。今回我々は、Rループのプロセシングの産物で細胞質中に存在する新しいRNA–DNAハイブリッド集団を明らかにした。RNA–DNAヘリカーゼであるセナタキシンの遺伝子(SETX)、あるいは乳がん遺伝子BRCA1を枯渇させることによって核内のRループを不安定化させると、XPGやXPFに依存して細胞質内でハイブリッドが形成されることが分かった。さらに、このハイブリッドの起源は、独特のヌクレオチドシグネチャーを持ち、安定で重複部分のある核内ハイブリッドのサブセットであることが判明した。細胞質内のハイブリッドはパターン認識受容体CGASとTLR3に結合し、IRF3を活性化してアポトーシスを誘発する。切り出されたハイブリッドとRループが誘導する自然免疫応答は、眼球運動失行を伴う失調症2型患者由来でSETXが変異した細胞やBRCA1が変異したがん細胞でも認められる。これらの知見により、RNA-DNAハイブリッドがRループのプロセシング後に細胞質に異常集積する免疫原物質であることが確認され、Rループの集積と自然免疫応答による細胞死とが結び付けられた。Rループの異常なプロセシングとそれに続いて起こる自然免疫活性化は、神経変性疾患やがんなどの多くの病気の一因となっている可能性がある。

