がん:グリオーマネットワークの自律的な周期的活動は脳腫瘍の増殖を促進する
Nature 613, 7942 doi: 10.1038/s41586-022-05520-4
びまん性グリオーマ(神経膠腫)、その中でもグリオブラストーマ(神経膠芽腫)は、治療不能の脳腫瘍である。これらの腫瘍に特徴的なのは相互接続した脳腫瘍細胞が作るネットワークで、細胞はカルシウム濃度の一過的上昇、つまりCa2+トランジェントを介して情報を交換し合っている。しかし、このネットワークの構造、情報交換戦略や、それが腫瘍の生物学的性質にどのように影響するのかはいまだに不明である。今回我々は、グリオブラストーマ細胞のネットワークに、Ca2+濃度の周期的振動を示し、他の細胞との接続が特に多く、活性の高いグリオブラストーマ細胞からなる可塑性の小集団が含まれていることを明らかにした。これらの細胞で自律的な周期的Ca2+トランジェントが起こると、それに続いてネットワークに結合した他の細胞にCa2+トランジェントが生じ、トランジェントの頻度に依存してMAPK経路とNF-κB経路が活性化される。数学的ネットワーク解析により、グリオブラストーマネットワークのトポロジーはスケールフリー性、スモールワールド性に従っていて、周期性を示す腫瘍細胞はネットワークのハブに位置する頻度が高いことが明らかになった。このように設計されていることで、ネットワークはランダムな損傷に対しては抵抗性があるが、核心となるハブの喪失に対しては脆弱である。自律的な周期的振動活性を標的として、周期性を示す腫瘍細胞の物理的な方法による選択的除去、あるいはカリウムチャネルKCa3.1(別名IK1、SK4、KCNN4)の遺伝的あるいは薬理学的な阻害を行うと、ネットワーク全体の情報交換が強く障害される。これは、ネットワーク全体での腫瘍細胞の生存能の著しい低下につながり、マウスでは腫瘍増殖が抑えられて、生存期間が長くなった。グリオブラストーマネットワークが、周期性を持つCa2+活動に依存することから生じる腫瘍の脆弱性は、KCa3.1阻害剤のような新規な治療法の開発に利用できる可能性がある。

