がんゲノミクス:がんでは構造バリアントが状況に依存したがん遺伝子活性化を促進する
Nature 612, 7940 doi: 10.1038/s41586-022-05504-4
高次クロマチン構造は、遠位調節配列による遺伝子の調節に重要な役割を果たしている。ゲノムの三次元(3D)構造を変化させる構造バリアント(SV)は、エンハンサー–プロモーターの関係性の変化やヒトの病気(特にがんの場合)に結び付く可能性がある。しかし、遺伝子発現の変化との関連が示されているSVはごく少数であり、なぜ特定のSVが遠位の遺伝子発現を変化させるのに、他のSVは変化させないのか、その理由もいまだに分かっていない。今回我々はこれらの疑問を解明するため、ゲノムプロファイリングとゲノム工学的手法とを組み合わせて、がんで3Dゲノム構造の変化が頻発する座位を探し、特定の再編成ががん遺伝子の活性化に及ぼす影響を調べた。92のがん細胞株と患者サンプルのHi-Cデータを解析することによって、MYC、TERT、CCND1などのがん遺伝子を含め、3Dゲノム構造の変化が頻発することで影響を受ける座位が明らかになった。CRISPR–Cas9を使うゲノム編集を行ってde novoなSVを生じさせることによって、がん遺伝子の活性は、パートナー領域のクロマチンの接触とエンハンサーの活性を考慮するABC(activity-by-contact)モデルを使って予測できることが明らかになった。ただし、ABCモデルで予測できるのは、ゲノム中の特定の遺伝子群だけであることから、遺伝子のクラスが異なると、遠位調節エレメントによる調節様式が異なっていることが示唆される。これらの結果は、3Dゲノム構造を変化させるSVががんゲノムに広く存在することを示しており、がん遺伝子の活性化にSVが及ぼす影響を予測する法則の解明の糸口になるだろう。

