がん:腫瘍内部の微生物相ががんの空間的および細胞的な不均一性に及ぼす影響
Nature 611, 7937 doi: 10.1038/s41586-022-05435-0
さまざまなタイプのヒトがんで、腫瘍に結び付いた微生物相は、腫瘍内微小環境に内在する構成要素の1つとなっている。腫瘍内での宿主と微生物相との関係の研究は、これまでほとんどが腫瘍組織全体の解析に基づいて行われてきた。しかし、それでは腫瘍内での微生物相の空間分布や局在の影響が曖昧になってしまう。今回我々は、口腔扁平上皮がんと大腸がんでin situで行う空間プロファイリング技術と単一細胞RNA塩基配列解読を用い、空間、細胞および分子のレベルでの宿主–微生物相互作用を明らかにした。まず、10x Visium空間トランスクリプトミクスを適用して、患者の組織内で腫瘍内微生物集団のアイデンティティーとin situでの位置を決定した。次いで、GeoMxデジタル空間プロファイリングを用いて、細菌集団が生息しているのは、細菌がいない腫瘍領域に比べると血管形成が少なく、免疫が高度に抑制されていて、Ki-67レベルがより低い悪性細胞と関連付けられる微小なニッチ内であることが分かった。我々はINVADEseq(invasion–adhesion-directed expression sequencing)と命名した単一細胞RNA塩基配列解読法を開発して、これを患者の腫瘍で使用することにより、細胞に結合している細菌とそれが相互作用する宿主細胞を突き止めるとともに、炎症、転移、細胞の休眠、DNA修復に関わっている転写経路の変化を明らかにした。機能研究によって、細菌が感染したがん細胞は周囲の環境に1個の細胞として侵入し、細菌のいる領域に骨髄系細胞を動員することが分かった。これらのデータを総合することにより、腫瘍内部の微生物相の分布はランダムではなく、微生物相が免疫細胞や上皮細胞が機能している微小なニッチ中に高度に組織化されて存在し、がんの進行を促進することが明らかになった。

