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遺伝学:ASDでは大脳皮質全域に広範なトランスクリプトーム調節不全が起こる

Nature 611, 7936 doi: 10.1038/s41586-022-05377-7

神経精神障害にはこれまで、確定的な脳病理所見がなかったが、最近の研究で、トランクリプトームの変化やエピジェネティックな変化を特徴とする分子レベルの調節不全の存在が実証されている。自閉症スペクトラム障害(ASD)では、この分子病理に、ミクログリア・アストログリア・神経の免疫関連遺伝子の発現亢進、シナプス関連遺伝子の発現低下、皮質での遺伝子発現勾配の減少が関与している。しかし、こうした変化が皮質連合野に限定的なものか、より広範なものかは分かっていない。今回我々は、この問題に取り組むために、ASD患者と定型発達者に由来する112例の死後試料(11の皮質領域にわたる725の脳試料)について、RNA塩基配列解読解析を行った。その結果、ASD群では皮質全体で広範なトランスクリプトーム変化があることが見いだされた。この変化には前–後勾配があり、一次視覚野に最も大きな差異が見られ、これは皮質諸領域間の典型的なトランスクリプトームの差異の減少と符合する。単一核RNA塩基配列解読とメチル化プロファイリングによって、このロバストな分子シグネチャーは細胞タイプ特異的な遺伝子発現の変化を反映しており、特に興奮性ニューロンとグリア細胞に影響を及ぼしていることが示された。まれなASD関連遺伝子変化もありふれたASD関連遺伝子変化も、シナプスでのシグナル伝達に関わる発現低下した共発現モジュールに集中しており、ありふれた変化に限っては、発現亢進したタンパク質シャペロン遺伝子モジュールの1つで多く見られた。今回の結果から、ASDでは大脳皮質全域に広範な分子的変化があり、連合皮質ばかりでなく一次感覚領域にも広く及ぶことがはっきりと示された。

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