分子生物学:選択的なTnsC動員はRNA誘導性転位の忠実度を高める
Nature 609, 7926 doi: 10.1038/s41586-022-05059-4
細菌のトランスポゾンは広範に見られる可動性遺伝因子であり、それぞれに異なるDNA結合タンパク質を用いて水平伝播する。例えば、大腸菌(Escherichia coli)のTn7は、TnsDによって特異的な付着部位に誘導されるが、CRISPR関連トランスポゾンはI型あるいはV型のCasエフェクターを用いて、ガイドRNAが指定した標的部位の下流に挿入される。このような標的化の多様性にもかかわらず、転位には常にTnsB(DNAの切除と挿入を触媒するDDEファミリートランスポザーゼ)とTnsC(トランスポザーゼと標的タンパク質の間の情報伝達を行うと考えられているAAA+ ATPアーゼ)が必要とされる。しかし、TnsCがこの情報伝達をどのように仲介し、それによって転位の忠実度をどのように調節するのかは分かっていない。今回、ChIP-seq(chromatin immunoprecipitation with sequencing)を用いて、in vivoでのI-F型RNA誘導性のトランスポゾソーム形成を監視することにより、組み込み前に起こる個別のタンパク質動員事象の解明が可能になった。TniQ–Cascade複合体によるDNA標的化は意外にも無差別的で、数百か所のオフターゲットなゲノム部位が抽出されたが、TnsCとTnsBの動員がライセンスされているのはこれらの部位の一部のみで、非常に重要な校正チェックポイントが存在することが明らかになった。我々は、トランスポゾソームの組み立てに関わる相互作用機構をより深く理解するために、クライオ電子顕微鏡を用いてTnsCの構造を決定し、ATP結合によって七量体環状構造の形成が誘導され、その中央部の孔にDNAが通り、これによってDNAが適切な位置に置かれて下流で組み込みが行われることを見いだした。まとめると我々の結果は、RNA誘導性転位の際にゲノム標的部位に連続的に因子が結合することによって分子特異性が付与されることをはっきりと示しており、将来的に工学的な取り組みにつながる構造的なロードマップを提供する。

