構造生物学:SHOC2–MRAS–PP1Cホロホスファターゼ複合体の構造–機能解析
Nature 609, 7926 doi: 10.1038/s41586-022-04928-2
下流のMAPキナーゼ(MAPK)カスケードを介した受容体型チロシンキナーゼ(RTK)–RASシグナル伝達は、細胞の増殖と生存を調節している。SHOC2–MRAS–PP1Cホロホスファターゼ複合体は、RTK–RASシグナル伝達の重要な調節因子として機能しており、タンパク質のRAFファミリーが受けた阻害的リン酸化を解除することでMAPKシグナル伝達を増強している。SHOC2は、MRASおよびPP1Cと共に三者複合体を形成していて、ヒト生殖細胞系列でこの複合体に機能獲得変異が生じると先天性RASopathy症候群が生じる。しかし、この複合体の構造とその組み立てについては不明なところが多い。今回我々は、クライオ電子顕微鏡法を用いてSHOC2–MRAS–PP1C複合体の構造を解き、ホロ酵素の相互作用の生物物理学的特性を明らかにし、複合体が組み立てられる際の会合の順番を解明した。また、deep mutational scanningを使って、SHOC2について考えられるミスセンス変異体のほとんど全てについて、それらがもたらす機能的帰結を詳細に調べた。我々は、SHOC2がロイシン・リッチ・リピート領域の凹んだ表面を介してPP1CとMRASに結合し、PP1Cとはさらに、短く機能不明のRVXFモチーフを含むN末端の非構造領域を介して結合していることを示す。複合体形成はSHOC2とPP1C間の相互作用に仲介されて始まり、GTPが結合しているMRASの結合により安定化される。これらの観察結果によって、RASopathyやがんで、SHOC2の変異体が複合体メンバーの相互作用を安定化してホロホスファターゼ活性を増進する仕組みが説明される。まとめると、この統合的な構造–機能モデルは、SHOC2–MRAS–PP1Cホロホスファターゼ複合体中での相互作用による重要な結合を包括的に明らかにしており、これは治療法開発のための情報となるだろう。

