Article
神経科学:行動の自然な切り替えは海馬符号化を素早く調節する
Nature 609, 7925 doi: 10.1038/s41586-022-05112-2
動物もヒトも、日常生活では頻繁に行動を切り替えている。しかし、神経科学研究では通常、動物が一度に1つの行動課題を行っている際の脳を調べるため、脳回路が異なる行動間の切り替えをどのように表現しているかはほとんど分かっていない。今回我々は、この問題を検討するために次のような動物行動学的設定を用いた。2頭のコウモリを長さ135 mのトンネル内に放ち、1頭だけで飛ぶ時(ソロ)と2頭がすれ違って衝突を避ける時(すれ違い)とで、ナビゲーションの切り替えを行わせた。コウモリは、毎回すれ違う前に反響定位のクリック頻度を上げることから、相手に注意を向けていることが分かった。コウモリが1頭だけで飛ぶときには、海馬CA1ニューロンは、自身の位置を表現していた(位置符号化)。重要なことに、すれ違いの際には、海馬CA1ニューロンは自分の位置から相手までの距離を併せて表現するよう、素早く切り替えを行った。このニューロンの切り替えは100ミリ秒程度と非常に速く、これは自然な行動の切り替えが非常に速いことによる可能性がある。ニューロンの切り替えは、反響定位で示されるように注意の信号と相関していた。興味深いことに、同じニューロンの異なる場所受容野は、コウモリ間の距離に対して非常に異なる同調を示すことが多く、距離による位置の複雑かつ不可分な符号化を生み出していた。理論的解析により、この複雑な神経表現がより効率的な符号化につながることが分かった。以上より、今回の結果から、動的な自然行動の際、海馬ニューロンはそのコアな演算を素早く切り替えて関連する行動の変数を表現し、行動の柔軟性を支えていることが示唆された。

