生化学:膜に係留されたHDCRナノワイヤーは水素を原動力とするCO2固定を推進する
Nature 607, 7920 doi: 10.1038/s41586-022-04971-z
フィラメント(繊維)状の酵素は生命の全てのドメインで見つかっているが、フィラメント化の利点は、はっきり分からない場合が多い。一部の嫌気性独立栄養細菌は、CO2固定のために独特なフィラメント状酵素[水素依存性CO2レダクターゼ(HDCR)]を持ち、これがH2とCO2をギ酸へと直接変換する。HDCRがCO2を還元する活性は既知のどの生物触媒や化学触媒よりも高く、そのため地球全体に関連する2つの分野、すなわち水素貯蔵分野と大気中CO2の捕捉による気候変動対策の分野でかなりの関心を集めている。しかし、HDCRの高い触媒回転率の基盤となる機構は、いまだに解明されていない。今回我々は、クライオ電子顕微鏡を用いて、酢酸生成菌のThermoanaerobacter kivui由来の短いHDCRフィラメントの構造を明らかにした。最小反復単位は、1個のギ酸デヒドロゲナーゼ(FdhF)と2個のヒドロゲナーゼ(HydA2)(これらはヒドロゲナーゼFe-Sサブユニットの中心コア周囲に結合している)、1個のHycB3、2個のHycB4で構成される六量体である。このような小型の細菌ポリフェレドキシンに似たタンパク質が、C末端ヘリックスを介してオリゴマー化して、フィラメントの骨格を形成している。構造を手掛かりにした変異導入と酵素学的解析とを組み合わせて調べたところ、フィラメント化とフィラメントを介した迅速な電子伝達が、HDCRの活性を高めていることが明らかになった。HDCRのin situでの構造を調べるため、T. kivui細胞の画像をクライオ電子線トモグラフィーによって作成したところ、HDCRフィラメントが束状に集まって大型の環状の超構造を作り、細胞膜に結合していることが明らかになった。この超分子構造がHDCRの安定性と結合性をさらに高め、細胞内に特殊な代謝サブ区画を形成しているのかもしれない。

